金沢市金川(かながわ)町周辺の五つの養蜂場でミツバチが大量に死んでいるのが25日、分かった。原因は不明。スイカやメロンの授粉用として農家へのハチの貸し出しが始まった矢先の被害に、業者は「商売が成り立たない」と悲鳴を上げる。農作物の収穫に影響を及ぼしかねず、業者は石川県外からハチを調達するなど赤字必至の対応も迫られている。
ミツバチの死骸は23日夕方に見つかり、24、25日と増えている。被害の大きかった県養蜂組合員の西岡太郎さん(37)方の養蜂場では、大小50以上ある巣箱の前に、多い場所で数百匹が死んでいた。ほかの組合員4人が営む周辺の4養蜂場でも同様の被害が確認された。
原因について、組合員からは「農薬の影響ではないか」「病気の可能性もある」などとの見方が出ているが、特定はできていない。同組合は畜産草地研究所(茨城県つくば市)に死骸を送り、原因を調べる。
4月下旬〜5月上旬はスイカやメロン農家へのミツバチの貸し出しがピークとなる。被害を受けた組合員5人は今春、JA金沢市との間で約360箱(約110万匹)の貸し出し契約を結んでおり、同JAの需要の半分近くを占める。
県養蜂組合の南俊治組合長(77)は「原因よりもまずは農家への出荷をどうするかだ」と話し、はちみつ採取用のハチや来年の群れの元となる「種蜂」を授粉用に回して対応する。それでも足りない可能性もあり、南組合長は「負担は大きいが、県外の養蜂業者から買い付けるしかない」と話した。
ミツバチが短期間で一斉に死んだことを考えると、農薬の影響を受けた可能性が大きい。ウイルスやダニによる被害もあり得るが、その場合、被害は長期間にわたって現れるだろう。
さらに、巣箱の前に死骸が集まっていたことにも注目したい。群れが病気にかかっていたとしたら、さまざまな場所へ飛び立ち、散り散りに死んでいくはずだ。
大量死と時を同じくして、周辺農家で農薬散布が行われていたとの情報もあるが、これが原因とは決め付けられない。農薬に直接触れた場合はハチが即死し、巣に戻ることなく命を落とすからだ。
帰巣してから影響が現れたことを考えると、農薬が溶け込んだ水をハチが摂取した可能性がある。近年の主流であるネオニコチノイド系農薬は、水に溶けても分解されずに数年は残る。世界各地で報告されているミツバチの大量失踪の一因としても指摘されている農薬だ。今春でなく、昨年の秋ごろに散布された農薬の影響を受けたとも考えられる。
タイミングが悪いことに、春は生まれたてのハチが多くの水を欲する。水を口に含んで帰巣したハチが、巣内の幼いハチに水を与え、巣で被害が拡大したのかもしれない。(談)